あなたの10年、どうだった?vol.2 - 後編

▼4年前

仕事への葛藤

 

―この頃は、居酒屋とネカフェのダブルワークを続けてたの?

 そう。でも、そろそろ仕事を固めなきゃという気持ちと、だんだん辛くなってくるわけですね、体力的に。さっきもちょっと触れたんですけど、飲み屋さんの仕事の環境が、あまりよろしくなくて。初めて勤めたところと比べれば、拘束時間と休日自体はいいんですけど、ただ、なかなか人柄がヤバかったっていうのが言うのがありますね。

 結局また、転職を考えるわけで。そんなに給料もらえなくてもいいから、自分の時間も取れて、それなりに仕事へも責任を持ってやれる、中間ぐらいの仕事ができればいい。

 飲食店じゃなくてもいいかな?って気持ちも芽生えたんだけど、調理の学校に行かしてもらったのは親のお金だったので…ちょっとずつ返してましたけど。なんかそういう面でも、お仕事変えるのが申し訳ないな…という葛藤がありました。

 

―自分の夢はどうだったの?

 その頃は、自分のお店を出すとか、飲食店で何かを成し遂げるみたいな気持ちは、もう無かったですね。学生の頃から、お仕事の夢とは別のものとして、好きな人と、好きな時間を、一緒に過ごしていくっていう夢を持っていて。それが強くなりましたね。 

 

 無理ですけど、無理ですけど、家庭が欲しかったんですよね。ちっちゃい頃から。だから、憧れちゃったんですよね。自分はゲイだけど、子どもがいて、奥さんがいて。そういうのに憧れてた。

 

 僕…、寂しがり屋だから、人がいないとダメなんですよね。「誰かと」っていうことについて、僕の中に強い気持ちがあるんです。誰かがいてくれる。ひとりじゃない。そういったときに、不安が安心に変わるんです。

 

―誰かと居る時は、不安って忘れられる?

 うーん、忘れられるっていうか、この人となら乗り越えられるかな、とか。

 

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▼3年前

転職 / 自分と向き合い始める / 彼女と復縁

 

 まあ、仕事を変えようってなった時に、今までとは違う食の分野に興味があって。それをお仕事にしたいっていう気持ち自体は、学生のときからあったんですね。そうして転職をして、今もその仕事をしています。彼女と再会したのも、その頃で。

 

―転職したのが先だったのかな?

 ええ、そうですね。

 まず、彼女っていう存在が消えたことで、若干自分の中に、余裕もできたし。自分の時間も出来たから、自分を見つめ直すいいきっかけにはなったんじゃないですかね。あらためて、仕事に対して自分がどう思っているのか?恋愛についてどう思ってたか?とか。この頃はめちゃくちゃ考えましたね。それで、まずはお仕事を変えて、自分を固めようって思ったのかな。

 親に心配をかけたくないって気持ちもあったかな。気を使ってくれてるのを感じたんですよ。親だから、なんとなく僕の性格も分かるわけじゃないですか。まあ、溜めこむっていうのもわかってるし、言わないっていうのもわかってるから…。僕が、親に心配かけたくないなっていう。

 それもあって、自立心っていうか、ひとりでもちゃんと生きていけるっていうのを、はっきり見せてあげなきゃっていう気持ちが、この頃はめちゃくちゃ強かったですよね。

 

―仕事選びも、そういった事が影響してた?

 そうですね。初めての職場の頃から、親からずっと心配されてたんですよ。拘束時間が長くて、ちゃんと休めて無いとか、職場の人で悩んでるとか。だから、そういう心配をかけたくないっていう。

 あと、仕事を選ぶときは、福利厚生がちゃんとしてるとか、ボーナスがちゃんともらえてとか…。親からも、結構言って来てたんですよね。だから、この時の仕事選びは慎重になってたかもしれない。

 

―恋愛と向き合ったのは、どうだったんだろう?

 転職活動の空く時間に…男性ですね。数ヶ月だけ付き合った人がいたんですよ。

 

―男性と付き合ったのは初めて?

 そうなんです。そこが初めて。僕、ゲイのコミュニティみたいなところに行ったことないし、SNSとかもやってなくて、つながりが全くなかったんですよ。だから、実際にお付き合いしてみないことには、こっちの世界ってわからないなって気持ちが強かったんです。それで、お付き合いしてみたんですけど…、まあ結果ダメでしたね(笑)。

 

―えー、そうだったんだ。

 なんか、お付き合いした人に元カノの話もしてたんですけど、「元カノとまた戻ったら、自分は捨てられるだけだからイヤ」みたいに言われて…、そんな言い方はしなくてもよくない?って。自分は話しておかなかきゃって、真剣だったんですよ?でも、なんかそういう風に捉えられられてたんですよね。

 

―男性と恋愛をしてみた感じはどうだった?

 デートしたりとかした時、めっちゃ楽しかったですね。まあ、もちろん周りの目は気にするんですけど、なんかこうルンルンで買い物して、一緒にご飯食べて、車の中でこうお話しして…めっちゃデートしてるじゃん!みたいな(笑)。

 本当は、おうちに泊めてほしかったんですけど…。その、駆け引きも楽しかったですね。奥手な人だったから、泊めてもらえなかったんですけど(笑)。

 彼女と付き合った時は安心感が強かったけど、男性だとドキドキというか、楽しさの方が強かったのかな。そういうのが、新鮮だった。

 でも、何だろうな…。よく言うじゃないですか。結婚は、安定なのか、理想なのかみたいな。自分はきっと、安定を取るんだろうなって思いました。男性とお付き合いしてみて。

 

―男性との恋愛は楽しかったけども…。

 って、感じですね。たぶん自分の中に、まだ捨てきれない思いがあったんでしょうね。彼女への気持ちもそうだし、家庭への思いっていうところが、たぶん強かった。

 

―彼女とまた会ったのはこの頃?

 そうですね。まあ仕事のことも、だいたいどうするか固まって、将来のことも、なんとなくまとまってきたから、それも含めて向き合おうって感じで。

 

―お会いして、どんな話をしたのかな?

 うーん、めっちゃ真面目な話をずっとしてたのは覚えてるんだけど…。

 彼女と待ち合わせした時、彼女が深刻な顔してて。内心、「もしかして、会いたくなかった?」って、思ってました。それで、近所に出来たご飯屋さんに行ったんですけど…、いやあ、味覚えてないな(笑)。

 結局、深刻な顔してたのも緊張してたからみたいで。「やっぱりダメって言われたらどうしよう?」みたいな。それで、公園のベンチに座って話し始めたのかな。さっき言ったのお仕事の話とか、ちょっと付き合った男の話とかもしました(笑)。

 

―その話、したんだ!

 全部正直に言いました(笑)。

 あと実家をどうするかとか、誰が親の面倒を見るとか、そういうところも含めて、お話したのは覚えてます。それで最後には、ふたりだったら乗り越えられるんじゃない?って。支え合って生きていけたらいいねって。

 でも、もしまた無理ってなったら、その時は引きずらずに、ちゃんと別れよう、という話もしました。それまでは一緒にいよう、って。

 

―別れるまで一緒にいよう。

 それはもう、しょうがないって。お互いに。どっちかがそういう気持ちに、いずれなったとしても、しょうがないね。それまで一緒に生きていこう、みたいな感じで、強い絆を結んだ…はずだったんですけどね。

 

―はずだった。

 はずだったんですよ。

 

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▼2年前

現在の仕事に本腰を入れる / 結婚や将来について

 

 転職をしてしばらくした頃、ここで頑張っていくんだっていう強い気持ちがあったし、彼女とも、これからどうやって生きていこうみたいな…例えば同棲するとか、お互いに色んな事を話すようになりました。

 まあ気持ち新たに、じゃないですけど、このまま付き合っていけば、多分結婚するんだろうなって。お互いになんとなくそういう風に感じながら、一緒に居ましたね。

 でも正直、その時も曖昧だったんです。「結婚?」みたいな。「ゲイなのに、この人と結婚?」みたいな。「本当に大丈夫かな?」っていうのは、ちょっとあったかもしれない。でもまあ、こんだけ長く一緒にいるような彼女とまた戻ったんだから、まあそろそろ結婚だろう。それは当然だよなっていうのは、思ってました。結婚しないって選択は、あんまり考えなかったかな。

 

―結婚したいというより、結婚しないことはないだろうと。

 まあ、そうした方が世間体もいいだろうし、親も安心するし…。

 

―でも、ゲイとしての自分もいて。

 やっぱ迷ってるんですよね。自分は一生。

 

―結婚とか抜きにして、一緒にいる分にはどうだったの?

 めっちゃ楽しかったですね。付き合った彼とのデートも楽しかったけど、もう気心知れた幼馴染ぐらいの仲ではあったから。

 

―彼女は楽しそうだった?

 うん、そうですね…。彼女も楽しかったと思う。うん、すごい。

 復縁した時も、めちゃくちゃ嬉しそうにしてくれて。なんか僕が言うのも変なんですけど、すごい、僕のことを好きでいてくれるんですよ。すごい、好きを表現してくれるし、こいつ僕がいなくなったら、生きていけないんじゃないかっていうレベルで、好きでいてくれたんですよ。だから、そういう情とか、惰性っていうか。別れたら、こいつダメになっちゃう…そんなことを思うと、余計別れられなかった。

 

―新しい仕事はどうだったの?

 楽しかったです。自分がやりたかったというのもあるし、職場の人が、こんなとこあるかっていうぐらい、めっちゃくちゃいい人たちで。休みもしっかりしてれば、ちゃんと福利厚生もあるしね。こんな素敵なとこあるんだ。しかも、めっちゃキラキラしてるお店で働いているっていう。

 だから、ここで上を目指せたらどんなにいいか…みたいなのがありました。上の人もすごく気に入ってくれたし、いずれ本社とかにも勤務できるって言われて、頑張ろうっていう一心でやってましたね。

 

―仕事も恋愛も、とりあえずはこのまま進んでいくのかなって感じになって。

 そうですね。こういう風に言葉で言ってれば、まあいい感じなんでしょうけど…。

 今になって、これが良かったか、悪かったかっていうのは分からないですけど、その頃からゲイのひととかかわるために、SNSを始めてしまったんですよね。自分は家庭が欲しい。でも子供は無理だろう。そもそも、ゲイである自分が、女性と結婚するのは…。

 いろいろ頭に浮かべて考えた時に、じゃあ、実際に世の中に居るゲイの人たちはどうやって生きてて、将来についてどう思ってるんだろう?どう考えて生きているんだろう?っていうのを、知りたかったんですよ。

 それが、彼女と別れるのに繋がっちゃったのかなって、今となっては思うんですよね。

 

―SNSを始めて、ゲイに対する見方は変わった?

 うん、すごい変わりました。 

 

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▼1年前

彼女と決別 / 今の彼との出会い / コロナによって崩れた将来と仕事と恋愛

 

 コロナが流行り出して、彼女と会わない時間ができたんですよ。そうすると、いろんなゲイの人との交流が増えて…まあ会ったりとかではなくて、SNS上のやり取りとかで。それで、色んな人の思いを知るわけですよね。

 今までって、なんか自分の中で、ゲイという存在がふわっとしたものだったんですよね。周りにゲイの人たちって、本当に存在しているのかな?ってぐらいの気持ちで、生きてきたから。SNSをやり始めてから、「ああ、ちゃんといるんだな」というのが、なんとなく輪郭がはっきりしてきたんです。

 

 それで、自分もこうやって生きていけるのかな、とも。

 

 その頃、彼女のことは好きだし、家庭も欲しいけど、自分は子どもを作ってあげることはできないんだろうということに、すごい悩んでたんですね。それで、SNS上でいろんな人に相談して、いろんな人の話を聞いた時に、その気持ちがようやく諦められたんです。学生の頃から持っていた、家庭を持ちたいっていう気持ちが。

 ここまで、ずっと諦めきれなかったのかな。家庭を持つことへの、未練というか。それが、彼女とのつながりに固執するのに、いくらかは繋がっていたんだと思う。

 

 それで、いろんなゲイのひとたちが生きている世界を知ってしまった僕は、彼女と会う時間もコロナで減って、感覚的に自由になってしまったんですよね。それで彼女から、「あんまり最近、私となんかこうアレだけど…どうしたいの?」みたいなふうになってきたんですよ。同棲の話とか、そろそろ結婚考えるとか、あんまり話を進めてくれないよね、みたいな。なんか乗り気じゃないよね、みたいな。もしかして、別れたい?みたいな。という感じから始まって…、2回目のお別れですね。

 

 また公園に行って、そこでいろいろお話しして。めっちゃ泣きました、僕。だって、別れたくないですもん。今でも思い出す。

 

―どんな風に伝えたの?

 好きであることは変わらない。このまま結婚することはできるんだけど、きっと僕の中で迷いが生じて、彼女のことを悲しませてしまうし、絶対に僕じゃ幸せにしてあげられない。別れた方がいい。絶対その方がいいという風に。

 たぶん、自分が我慢すれば、このまま死ぬまで、彼女と過ごすことができたと思うんですよ。ただ、続けられたとして、そのうちの何年間か、仮に浮気しちゃったりとか、なんか気持ちが違う人のところに行ったりとか、悩み続けながら彼女と向き合うことになるのは…ダメだろうって。もし、歳をとってから別れましょうってなったら、それこそ時間を無駄にさせちゃうから、それは申し訳ない。別れようって。

 彼女からは…。「もちろん嫌だけど、年齢も考えて、今決断するのは良いことだと思う」って、言われました。

 

 そして、「ここで別れたら、もう戻ることはないよ」って。

 

 …泣きましたね、そうだよなって。それを言われてから、1時間かけて言いましたね。本当に泣きながら、それでも別れようって。

 たぶん、僕がゲイじゃなかったら、ずっと好きだったと思います。一生大切にしたと思う。

 

―彼女と会ったのは、これが最後?

 そうですね。そこからは、連絡はとってないです。

 

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 …この年、あとはなんでしたっけ。

 

―今の彼との出会いと、コロナによって崩れた、仕事と将来と恋愛かな。

 ああ、将来とか恋愛は、そこにつながるんですけど…。違う店舗を任せてもらえるとか、本社に異動するとかっていうのは、結局…コロナで飲食店は全体的に大打撃受けたわけじゃないですか。そういういろんな話が、なくなっちゃったんですよね。今後ちょっとどうなるかもわからないって、急に突き放されて。マジか。ここで夢途絶えるかと思って…頑張ってきたのになって気持ちとね。

 実際コロナでお客さんは激減して、潰れることはなかったんですけど、めちゃくちゃ人が少ない状態でお店も任されて…。そうすると、一番働ける人に負担がかかるんですよ。それが、要は使いやすい。僕なんですよ。今の僕のいるお店では。今までふたりでやってたのを、ひとりでやるみたいな感じ…だから、この1年、相当疲れましたね。

 

―ひとりで出来ちゃったんだね。

 そうね。無理するんですよね、僕。周りの同僚も、心配はしてくれるんですよ。でも、結局手伝ってもらえるわけじゃないし、僕に頼る上司もいるし…、なんなんだっていう気持ちでした(笑)。

 いま、政治とかも色々ね、やっと若い人たちも気付き始めてるじゃないですか。日本の政治がヤベえなみたいな。それと同じで、うちの会社も、やっぱこういう窮地に陥った時に見えてくるんですよね。 本質が、いろんなところに。判断とか、仕事の体系とか。それで、この会社の体質ダメだって見えてきて…、それでまた、転職を考えてます。

 そんなさなかに出会ったのが、いまの彼氏ですね。

 

―ああ、今の彼氏。

 SNSを始めた頃に、メッセージを送ってくれた人がいて、それが彼なんですけど。やりとりをしていくうちに、僕が会いに行って…まあ遠距離なんですけど。なんとなく、成り行きで付き合った感じかな?

 

―「好きです」って初めて伝えるとか、そういうイベントはなかったの?

 無いんですよ。それが僕ら、無いんですよ。 まあ記念日とか、別にやりたいと思わないんですけど、いつから付き合ったのは定かではないですね。

 

―今では、お互いに好きって気持ちは言ってるの?

 僕はめっちゃ言います。けど、相手はあんまりないです。だから…、好きなのかな?好きだとは思うんですけど(笑)。

 

―遠距離というのは、気にならなかったの?

 出会った頃は、何も思わなかったかな。その、絡み始めたときは、もちろん付き合うなんて思ってなかったし、単純に興味本意で声をかけてくれてるだけだろうと思ったから。それで会いに行って、なんとなく付き合い始めた後は…「いや、遠距離辛くない?」って思いました。どう考えても辛いでしょうって(笑)。

 

―付き合ってみてね(笑)。

 しかも、その彼も曲者で(笑)。

 例えば…クリスマスの話なんですけど。付き合って最初の年だから、僕は一緒にいたいと思ったんですよ。それで、その話を持ちかけました。でも僕、サービス業だから、お休み合わせられるかは分かんないけど、一緒に居たいなみたいな話をしておいたんですよ。

 でもなんか、僕が「休みとれない」って言ったようにして、彼氏は他のゲイの友達と旅行に行く約束を立ててたんです。しかも、それを僕が知ったのが、直接じゃなくて、SNSの投稿からで。いつとは書いてないけど、「宿を取った」って。

 

―あら、直接言われてないんだ。

 それで、僕は結局休み取れたんですよ。それがめっちゃうれしくて!さっそく彼氏に報告したら、「ごめん、予定がある」みたいな…。ごめんもなかったな。それで、「何の予定があるの?仕事?」みたいに言ったら、「いや、お休み取って、別のひとと旅行に行く…」って。「僕ら付き合ってるよね!?」みたいな(笑)

 これを話すと、絶対に職場の人だろうが、友達だろうが、みんな怒るんです(笑)。「なんで付き合ってるの?それ。やめた方がいいよ!」みたいな。そう言ったら、人柄が分かるかなあ(笑)。

 

―まあ、曲者な感じは伝わってきたよ(笑)。

 その後も僕は、すごい怒った雰囲気を出してしまったんですね。そうしたら、「今回は予定合わなくて残念だったけど、何か別のイベントは、一緒に過ごせたらいいな」みたいなことを言われたんですよ。なんでそんな上から目線なの?あなたのせいでしょ!って思いました(笑)。

 

―だいぶ怒ってますけども(笑)。彼女の時は向こうからグイグイ来てくれて、その誠実な人間性にも触れて、キミも好きになっていった感じだったよね。今度は、だいぶ立場が変わったように見えるんだけど、どうだろう?

 う~ん、彼女は、こういう気持ちで好きでいてくれたんだなあって、分かったかもしれない。同時に、反応してもらえないって、こんなつらいかと思いました。

 

―前の彼女への好きと、今の彼氏への好きは、違う感じがする?

 違うと思います。彼からは安心感とか感じないから…。何で好きになったんだろう。

 ああ、きっかけはあります。僕が、彼女と別れる別れないと別れた時ぐらいに、彼に泣きながら電話した時があって。その時に、「大丈夫、俺がいるから」みたいなことを言われて…、そんな風に言ってくれるんだと思って。そこまで断言してくれるんなら、頼れるひとなんだろうみたいな。…やっぱり安心感なのかな。助けてくれるんだ、支えてくれるんだ、みたいな。ときめきとかではなかったかな。

 

―やっぱり安心感があった。

 今はないですけど(笑)。

 

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―これで10年間のことを振り返ったね。

 そうですね。いろんなひとを思い出したな…。

 

 9年前のところで話した親友がいたじゃないですか。かれとは小学4年の頃から絡んでて、お互いにいろんな面をお互いに見せながら、いろんな話をしながら、一緒に大人になってきたんですよ。なんだろう、コンプレックスとか…ぶつけ合うっていうか。こいつのここが良い、でも自分はここが劣ってる。みたいなのを…、直接言いはしないけど。

 でも、実際彼は今結婚もしてるし、まあ子どももいて、今は大きい会社の本部にいらっしゃって、 なかなかのお金持ちになってて…、まあ今は疎遠になってしまったんですけど。そういうのも、一年、また一年と時間を経るごとに、自分との比較対象にはなってたかなと。

 いい表現が見つからないですけど、成功してる人・してない人、みたいな縮図が、自分の中でできてしまって。それが重かった。まあ、それを見せびらかしたり、自慢してくる奴だとは思わないですけど、そういう話にもなるじゃないですか。「今仕事どうで、嫁がどうとかで、そっちはどうなの?」って。そうなった時に、いや会うのは無理じゃない?って思っちゃいましたね。

 めちゃくちゃ頭いいんですよ、あいつ。世渡り上手だし、性格も顔も良いし…、賢い。子どもの頃から、そいつに憧れて生きてましたね。なんか、そいつを真似たところもあっただろうし。自分の人格を作る上で、一番影響が大きかった。

 「今度遊ぼうか」って言われたときも、会えるんだけど、自分から「この日予定出来た」って返してしまって…、だんだん距離を開いてしまった自分が居た時期がありましたね。今なら会えると思うんですけど。

 

―今だったら大丈夫なの?

 若干、抵抗ありますけどね。 何年か前は、もうちょっとこだわってたから。

 

―仕事のことは最近どうだろう。転職活動も始めて、今はどんなことを仕事に求めてる?

 「こういう仕事がしたい」っていうのは無くなりましたね。例えば、職種業種っていうか、飲食だからとか、そういうのではなくて。自分の時間も取れて、お給料もそこそこ高くもなくてもいいけど、低くはない。お休みしたいときに、休める。そういう仕事で、自分の生活範囲で出来れば、まあいいかなっていう…。凄い妥協に落ち着いてきたんですね。この10年で。

 今の仕事もここまでやったんだし、気持ちを切り替えて始めたことだから、続けたいって気持ちはあるけど…。やっぱり、お仕事の内容の厳しさと、お給料が見合わないから、厳しい。まあ、転職すると思います。

 

―恋愛はどう?

 んー、またやってくるクリスマスとか、自分の誕生日とか、そういうときに、彼がどうしてくれるかな?っていうの次第ですね(笑)。

 なんか別に僕、クリスマスとか誕生日とか、もともとそんな興味ないですけど、なんか…せめて、なんかあるでしょう?って思うんですよ。豪華なプレゼントとか、そんなもんなくていいけど、誕生日をお祝いするような、なにか一言あってもいいんじゃない?とか。

 去年のクリスマスには、「次は一緒に居たいな」って自分から言ったんだから、なんか、そういう約束もできない、果たせないとか、そういうのはちょっと、これから一緒に生きて行くんだったら、無理だなって。僕の人生観的には。

 

―約束をちゃんと果たしてくれるのは、大事だと思う?

 思いますね。自分の言ったことぐらい覚えてて…っていう感じかな。

 

―誰かと一緒に生きていくっていう時に、キミにとって何が大事?

 うーん、誠実さ?

 

―誠実さ。

 結局、結婚は今の日本では難しい。出産、子育てっていうことも、ないと思う。そうなると、僕らが法的にも結ばれない状態で、パートナーになって必死に暮らしていくって、相当な決意と覚悟がないと、ダメだと思うんです。ゲイのカップルが簡単に崩れる理由ってのも、たぶんそこにもあると思うんです。だから、軽い気持ちで付き合う人とかもいると思うし、別れる時も軽い気持ちの人もいると思うんです。そうではなくて、そういうこと(結婚、出産、子育てなど)がなかったとしても、誠実に相手と向き合ってあげられる。助けてあげられる。支え合いが出来る。そういう人が良いなって思ってます。

 

 別に、毎日ずっと真面目に生きろとか、ウソも一切つかないとかじゃなくて…、別にいいですよ。時々魔が差して、誰かと浮気したって。だけど、せめてパートナーにはしっかり向き合おうよって、僕は思ってます。

 

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