あなたの10年、どうだった?vol.2 - 後編
▼4年前
仕事への葛藤
―この頃は、居酒屋とネカフェのダブルワークを続けてたの?
そう。でも、そろそろ仕事を固めなきゃという気持ちと、だんだん辛くなってくるわけですね、体力的に。さっきもちょっと触れたんですけど、飲み屋さんの仕事の環境が、あまりよろしくなくて。初めて勤めたところと比べれば、拘束時間と休日自体はいいんですけど、ただ、なかなか人柄がヤバかったっていうのが言うのがありますね。
結局また、転職を考えるわけで。そんなに給料もらえなくてもいいから、自分の時間も取れて、それなりに仕事へも責任を持ってやれる、中間ぐらいの仕事ができればいい。
飲食店じゃなくてもいいかな?って気持ちも芽生えたんだけど、調理の学校に行かしてもらったのは親のお金だったので…ちょっとずつ返してましたけど。なんかそういう面でも、お仕事変えるのが申し訳ないな…という葛藤がありました。
―自分の夢はどうだったの?
その頃は、自分のお店を出すとか、飲食店で何かを成し遂げるみたいな気持ちは、もう無かったですね。学生の頃から、お仕事の夢とは別のものとして、好きな人と、好きな時間を、一緒に過ごしていくっていう夢を持っていて。それが強くなりましたね。
無理ですけど、無理ですけど、家庭が欲しかったんですよね。ちっちゃい頃から。だから、憧れちゃったんですよね。自分はゲイだけど、子どもがいて、奥さんがいて。そういうのに憧れてた。
僕…、寂しがり屋だから、人がいないとダメなんですよね。「誰かと」っていうことについて、僕の中に強い気持ちがあるんです。誰かがいてくれる。ひとりじゃない。そういったときに、不安が安心に変わるんです。
―誰かと居る時は、不安って忘れられる?
うーん、忘れられるっていうか、この人となら乗り越えられるかな、とか。
▼3年前
転職 / 自分と向き合い始める / 彼女と復縁
まあ、仕事を変えようってなった時に、今までとは違う食の分野に興味があって。それをお仕事にしたいっていう気持ち自体は、学生のときからあったんですね。そうして転職をして、今もその仕事をしています。彼女と再会したのも、その頃で。
―転職したのが先だったのかな?
ええ、そうですね。
まず、彼女っていう存在が消えたことで、若干自分の中に、余裕もできたし。自分の時間も出来たから、自分を見つめ直すいいきっかけにはなったんじゃないですかね。あらためて、仕事に対して自分がどう思っているのか?恋愛についてどう思ってたか?とか。この頃はめちゃくちゃ考えましたね。それで、まずはお仕事を変えて、自分を固めようって思ったのかな。
親に心配をかけたくないって気持ちもあったかな。気を使ってくれてるのを感じたんですよ。親だから、なんとなく僕の性格も分かるわけじゃないですか。まあ、溜めこむっていうのもわかってるし、言わないっていうのもわかってるから…。僕が、親に心配かけたくないなっていう。
それもあって、自立心っていうか、ひとりでもちゃんと生きていけるっていうのを、はっきり見せてあげなきゃっていう気持ちが、この頃はめちゃくちゃ強かったですよね。
―仕事選びも、そういった事が影響してた?
そうですね。初めての職場の頃から、親からずっと心配されてたんですよ。拘束時間が長くて、ちゃんと休めて無いとか、職場の人で悩んでるとか。だから、そういう心配をかけたくないっていう。
あと、仕事を選ぶときは、福利厚生がちゃんとしてるとか、ボーナスがちゃんともらえてとか…。親からも、結構言って来てたんですよね。だから、この時の仕事選びは慎重になってたかもしれない。
―恋愛と向き合ったのは、どうだったんだろう?
転職活動の空く時間に…男性ですね。数ヶ月だけ付き合った人がいたんですよ。
―男性と付き合ったのは初めて?
そうなんです。そこが初めて。僕、ゲイのコミュニティみたいなところに行ったことないし、SNSとかもやってなくて、つながりが全くなかったんですよ。だから、実際にお付き合いしてみないことには、こっちの世界ってわからないなって気持ちが強かったんです。それで、お付き合いしてみたんですけど…、まあ結果ダメでしたね(笑)。
―えー、そうだったんだ。
なんか、お付き合いした人に元カノの話もしてたんですけど、「元カノとまた戻ったら、自分は捨てられるだけだからイヤ」みたいに言われて…、そんな言い方はしなくてもよくない?って。自分は話しておかなかきゃって、真剣だったんですよ?でも、なんかそういう風に捉えられられてたんですよね。
―男性と恋愛をしてみた感じはどうだった?
デートしたりとかした時、めっちゃ楽しかったですね。まあ、もちろん周りの目は気にするんですけど、なんかこうルンルンで買い物して、一緒にご飯食べて、車の中でこうお話しして…めっちゃデートしてるじゃん!みたいな(笑)。
本当は、おうちに泊めてほしかったんですけど…。その、駆け引きも楽しかったですね。奥手な人だったから、泊めてもらえなかったんですけど(笑)。
彼女と付き合った時は安心感が強かったけど、男性だとドキドキというか、楽しさの方が強かったのかな。そういうのが、新鮮だった。
でも、何だろうな…。よく言うじゃないですか。結婚は、安定なのか、理想なのかみたいな。自分はきっと、安定を取るんだろうなって思いました。男性とお付き合いしてみて。
―男性との恋愛は楽しかったけども…。
って、感じですね。たぶん自分の中に、まだ捨てきれない思いがあったんでしょうね。彼女への気持ちもそうだし、家庭への思いっていうところが、たぶん強かった。
―彼女とまた会ったのはこの頃?
そうですね。まあ仕事のことも、だいたいどうするか固まって、将来のことも、なんとなくまとまってきたから、それも含めて向き合おうって感じで。
―お会いして、どんな話をしたのかな?
うーん、めっちゃ真面目な話をずっとしてたのは覚えてるんだけど…。
彼女と待ち合わせした時、彼女が深刻な顔してて。内心、「もしかして、会いたくなかった?」って、思ってました。それで、近所に出来たご飯屋さんに行ったんですけど…、いやあ、味覚えてないな(笑)。
結局、深刻な顔してたのも緊張してたからみたいで。「やっぱりダメって言われたらどうしよう?」みたいな。それで、公園のベンチに座って話し始めたのかな。さっき言ったのお仕事の話とか、ちょっと付き合った男の話とかもしました(笑)。
―その話、したんだ!
全部正直に言いました(笑)。
あと実家をどうするかとか、誰が親の面倒を見るとか、そういうところも含めて、お話したのは覚えてます。それで最後には、ふたりだったら乗り越えられるんじゃない?って。支え合って生きていけたらいいねって。
でも、もしまた無理ってなったら、その時は引きずらずに、ちゃんと別れよう、という話もしました。それまでは一緒にいよう、って。
―別れるまで一緒にいよう。
それはもう、しょうがないって。お互いに。どっちかがそういう気持ちに、いずれなったとしても、しょうがないね。それまで一緒に生きていこう、みたいな感じで、強い絆を結んだ…はずだったんですけどね。
―はずだった。
はずだったんですよ。
▼2年前
現在の仕事に本腰を入れる / 結婚や将来について
転職をしてしばらくした頃、ここで頑張っていくんだっていう強い気持ちがあったし、彼女とも、これからどうやって生きていこうみたいな…例えば同棲するとか、お互いに色んな事を話すようになりました。
まあ気持ち新たに、じゃないですけど、このまま付き合っていけば、多分結婚するんだろうなって。お互いになんとなくそういう風に感じながら、一緒に居ましたね。
でも正直、その時も曖昧だったんです。「結婚?」みたいな。「ゲイなのに、この人と結婚?」みたいな。「本当に大丈夫かな?」っていうのは、ちょっとあったかもしれない。でもまあ、こんだけ長く一緒にいるような彼女とまた戻ったんだから、まあそろそろ結婚だろう。それは当然だよなっていうのは、思ってました。結婚しないって選択は、あんまり考えなかったかな。
―結婚したいというより、結婚しないことはないだろうと。
まあ、そうした方が世間体もいいだろうし、親も安心するし…。
―でも、ゲイとしての自分もいて。
やっぱ迷ってるんですよね。自分は一生。
―結婚とか抜きにして、一緒にいる分にはどうだったの?
めっちゃ楽しかったですね。付き合った彼とのデートも楽しかったけど、もう気心知れた幼馴染ぐらいの仲ではあったから。
―彼女は楽しそうだった?
うん、そうですね…。彼女も楽しかったと思う。うん、すごい。
復縁した時も、めちゃくちゃ嬉しそうにしてくれて。なんか僕が言うのも変なんですけど、すごい、僕のことを好きでいてくれるんですよ。すごい、好きを表現してくれるし、こいつ僕がいなくなったら、生きていけないんじゃないかっていうレベルで、好きでいてくれたんですよ。だから、そういう情とか、惰性っていうか。別れたら、こいつダメになっちゃう…そんなことを思うと、余計別れられなかった。
―新しい仕事はどうだったの?
楽しかったです。自分がやりたかったというのもあるし、職場の人が、こんなとこあるかっていうぐらい、めっちゃくちゃいい人たちで。休みもしっかりしてれば、ちゃんと福利厚生もあるしね。こんな素敵なとこあるんだ。しかも、めっちゃキラキラしてるお店で働いているっていう。
だから、ここで上を目指せたらどんなにいいか…みたいなのがありました。上の人もすごく気に入ってくれたし、いずれ本社とかにも勤務できるって言われて、頑張ろうっていう一心でやってましたね。
―仕事も恋愛も、とりあえずはこのまま進んでいくのかなって感じになって。
そうですね。こういう風に言葉で言ってれば、まあいい感じなんでしょうけど…。
今になって、これが良かったか、悪かったかっていうのは分からないですけど、その頃からゲイのひととかかわるために、SNSを始めてしまったんですよね。自分は家庭が欲しい。でも子供は無理だろう。そもそも、ゲイである自分が、女性と結婚するのは…。
いろいろ頭に浮かべて考えた時に、じゃあ、実際に世の中に居るゲイの人たちはどうやって生きてて、将来についてどう思ってるんだろう?どう考えて生きているんだろう?っていうのを、知りたかったんですよ。
それが、彼女と別れるのに繋がっちゃったのかなって、今となっては思うんですよね。
―SNSを始めて、ゲイに対する見方は変わった?
うん、すごい変わりました。
▼1年前
彼女と決別 / 今の彼との出会い / コロナによって崩れた将来と仕事と恋愛
コロナが流行り出して、彼女と会わない時間ができたんですよ。そうすると、いろんなゲイの人との交流が増えて…まあ会ったりとかではなくて、SNS上のやり取りとかで。それで、色んな人の思いを知るわけですよね。
今までって、なんか自分の中で、ゲイという存在がふわっとしたものだったんですよね。周りにゲイの人たちって、本当に存在しているのかな?ってぐらいの気持ちで、生きてきたから。SNSをやり始めてから、「ああ、ちゃんといるんだな」というのが、なんとなく輪郭がはっきりしてきたんです。
それで、自分もこうやって生きていけるのかな、とも。
その頃、彼女のことは好きだし、家庭も欲しいけど、自分は子どもを作ってあげることはできないんだろうということに、すごい悩んでたんですね。それで、SNS上でいろんな人に相談して、いろんな人の話を聞いた時に、その気持ちがようやく諦められたんです。学生の頃から持っていた、家庭を持ちたいっていう気持ちが。
ここまで、ずっと諦めきれなかったのかな。家庭を持つことへの、未練というか。それが、彼女とのつながりに固執するのに、いくらかは繋がっていたんだと思う。
それで、いろんなゲイのひとたちが生きている世界を知ってしまった僕は、彼女と会う時間もコロナで減って、感覚的に自由になってしまったんですよね。それで彼女から、「あんまり最近、私となんかこうアレだけど…どうしたいの?」みたいなふうになってきたんですよ。同棲の話とか、そろそろ結婚考えるとか、あんまり話を進めてくれないよね、みたいな。なんか乗り気じゃないよね、みたいな。もしかして、別れたい?みたいな。という感じから始まって…、2回目のお別れですね。
また公園に行って、そこでいろいろお話しして。めっちゃ泣きました、僕。だって、別れたくないですもん。今でも思い出す。
―どんな風に伝えたの?
好きであることは変わらない。このまま結婚することはできるんだけど、きっと僕の中で迷いが生じて、彼女のことを悲しませてしまうし、絶対に僕じゃ幸せにしてあげられない。別れた方がいい。絶対その方がいいという風に。
たぶん、自分が我慢すれば、このまま死ぬまで、彼女と過ごすことができたと思うんですよ。ただ、続けられたとして、そのうちの何年間か、仮に浮気しちゃったりとか、なんか気持ちが違う人のところに行ったりとか、悩み続けながら彼女と向き合うことになるのは…ダメだろうって。もし、歳をとってから別れましょうってなったら、それこそ時間を無駄にさせちゃうから、それは申し訳ない。別れようって。
彼女からは…。「もちろん嫌だけど、年齢も考えて、今決断するのは良いことだと思う」って、言われました。
そして、「ここで別れたら、もう戻ることはないよ」って。
…泣きましたね、そうだよなって。それを言われてから、1時間かけて言いましたね。本当に泣きながら、それでも別れようって。
たぶん、僕がゲイじゃなかったら、ずっと好きだったと思います。一生大切にしたと思う。
―彼女と会ったのは、これが最後?
そうですね。そこからは、連絡はとってないです。
…この年、あとはなんでしたっけ。
―今の彼との出会いと、コロナによって崩れた、仕事と将来と恋愛かな。
ああ、将来とか恋愛は、そこにつながるんですけど…。違う店舗を任せてもらえるとか、本社に異動するとかっていうのは、結局…コロナで飲食店は全体的に大打撃受けたわけじゃないですか。そういういろんな話が、なくなっちゃったんですよね。今後ちょっとどうなるかもわからないって、急に突き放されて。マジか。ここで夢途絶えるかと思って…頑張ってきたのになって気持ちとね。
実際コロナでお客さんは激減して、潰れることはなかったんですけど、めちゃくちゃ人が少ない状態でお店も任されて…。そうすると、一番働ける人に負担がかかるんですよ。それが、要は使いやすい。僕なんですよ。今の僕のいるお店では。今までふたりでやってたのを、ひとりでやるみたいな感じ…だから、この1年、相当疲れましたね。
―ひとりで出来ちゃったんだね。
そうね。無理するんですよね、僕。周りの同僚も、心配はしてくれるんですよ。でも、結局手伝ってもらえるわけじゃないし、僕に頼る上司もいるし…、なんなんだっていう気持ちでした(笑)。
いま、政治とかも色々ね、やっと若い人たちも気付き始めてるじゃないですか。日本の政治がヤベえなみたいな。それと同じで、うちの会社も、やっぱこういう窮地に陥った時に見えてくるんですよね。 本質が、いろんなところに。判断とか、仕事の体系とか。それで、この会社の体質ダメだって見えてきて…、それでまた、転職を考えてます。
そんなさなかに出会ったのが、いまの彼氏ですね。
―ああ、今の彼氏。
SNSを始めた頃に、メッセージを送ってくれた人がいて、それが彼なんですけど。やりとりをしていくうちに、僕が会いに行って…まあ遠距離なんですけど。なんとなく、成り行きで付き合った感じかな?
―「好きです」って初めて伝えるとか、そういうイベントはなかったの?
無いんですよ。それが僕ら、無いんですよ。 まあ記念日とか、別にやりたいと思わないんですけど、いつから付き合ったのは定かではないですね。
―今では、お互いに好きって気持ちは言ってるの?
僕はめっちゃ言います。けど、相手はあんまりないです。だから…、好きなのかな?好きだとは思うんですけど(笑)。
―遠距離というのは、気にならなかったの?
出会った頃は、何も思わなかったかな。その、絡み始めたときは、もちろん付き合うなんて思ってなかったし、単純に興味本意で声をかけてくれてるだけだろうと思ったから。それで会いに行って、なんとなく付き合い始めた後は…「いや、遠距離辛くない?」って思いました。どう考えても辛いでしょうって(笑)。
―付き合ってみてね(笑)。
しかも、その彼も曲者で(笑)。
例えば…クリスマスの話なんですけど。付き合って最初の年だから、僕は一緒にいたいと思ったんですよ。それで、その話を持ちかけました。でも僕、サービス業だから、お休み合わせられるかは分かんないけど、一緒に居たいなみたいな話をしておいたんですよ。
でもなんか、僕が「休みとれない」って言ったようにして、彼氏は他のゲイの友達と旅行に行く約束を立ててたんです。しかも、それを僕が知ったのが、直接じゃなくて、SNSの投稿からで。いつとは書いてないけど、「宿を取った」って。
―あら、直接言われてないんだ。
それで、僕は結局休み取れたんですよ。それがめっちゃうれしくて!さっそく彼氏に報告したら、「ごめん、予定がある」みたいな…。ごめんもなかったな。それで、「何の予定があるの?仕事?」みたいに言ったら、「いや、お休み取って、別のひとと旅行に行く…」って。「僕ら付き合ってるよね!?」みたいな(笑)
これを話すと、絶対に職場の人だろうが、友達だろうが、みんな怒るんです(笑)。「なんで付き合ってるの?それ。やめた方がいいよ!」みたいな。そう言ったら、人柄が分かるかなあ(笑)。
―まあ、曲者な感じは伝わってきたよ(笑)。
その後も僕は、すごい怒った雰囲気を出してしまったんですね。そうしたら、「今回は予定合わなくて残念だったけど、何か別のイベントは、一緒に過ごせたらいいな」みたいなことを言われたんですよ。なんでそんな上から目線なの?あなたのせいでしょ!って思いました(笑)。
―だいぶ怒ってますけども(笑)。彼女の時は向こうからグイグイ来てくれて、その誠実な人間性にも触れて、キミも好きになっていった感じだったよね。今度は、だいぶ立場が変わったように見えるんだけど、どうだろう?
う~ん、彼女は、こういう気持ちで好きでいてくれたんだなあって、分かったかもしれない。同時に、反応してもらえないって、こんなつらいかと思いました。
―前の彼女への好きと、今の彼氏への好きは、違う感じがする?
違うと思います。彼からは安心感とか感じないから…。何で好きになったんだろう。
ああ、きっかけはあります。僕が、彼女と別れる別れないと別れた時ぐらいに、彼に泣きながら電話した時があって。その時に、「大丈夫、俺がいるから」みたいなことを言われて…、そんな風に言ってくれるんだと思って。そこまで断言してくれるんなら、頼れるひとなんだろうみたいな。…やっぱり安心感なのかな。助けてくれるんだ、支えてくれるんだ、みたいな。ときめきとかではなかったかな。
―やっぱり安心感があった。
今はないですけど(笑)。
―これで10年間のことを振り返ったね。
そうですね。いろんなひとを思い出したな…。
9年前のところで話した親友がいたじゃないですか。かれとは小学4年の頃から絡んでて、お互いにいろんな面をお互いに見せながら、いろんな話をしながら、一緒に大人になってきたんですよ。なんだろう、コンプレックスとか…ぶつけ合うっていうか。こいつのここが良い、でも自分はここが劣ってる。みたいなのを…、直接言いはしないけど。
でも、実際彼は今結婚もしてるし、まあ子どももいて、今は大きい会社の本部にいらっしゃって、 なかなかのお金持ちになってて…、まあ今は疎遠になってしまったんですけど。そういうのも、一年、また一年と時間を経るごとに、自分との比較対象にはなってたかなと。
いい表現が見つからないですけど、成功してる人・してない人、みたいな縮図が、自分の中でできてしまって。それが重かった。まあ、それを見せびらかしたり、自慢してくる奴だとは思わないですけど、そういう話にもなるじゃないですか。「今仕事どうで、嫁がどうとかで、そっちはどうなの?」って。そうなった時に、いや会うのは無理じゃない?って思っちゃいましたね。
めちゃくちゃ頭いいんですよ、あいつ。世渡り上手だし、性格も顔も良いし…、賢い。子どもの頃から、そいつに憧れて生きてましたね。なんか、そいつを真似たところもあっただろうし。自分の人格を作る上で、一番影響が大きかった。
「今度遊ぼうか」って言われたときも、会えるんだけど、自分から「この日予定出来た」って返してしまって…、だんだん距離を開いてしまった自分が居た時期がありましたね。今なら会えると思うんですけど。
―今だったら大丈夫なの?
若干、抵抗ありますけどね。 何年か前は、もうちょっとこだわってたから。
―仕事のことは最近どうだろう。転職活動も始めて、今はどんなことを仕事に求めてる?
「こういう仕事がしたい」っていうのは無くなりましたね。例えば、職種業種っていうか、飲食だからとか、そういうのではなくて。自分の時間も取れて、お給料もそこそこ高くもなくてもいいけど、低くはない。お休みしたいときに、休める。そういう仕事で、自分の生活範囲で出来れば、まあいいかなっていう…。凄い妥協に落ち着いてきたんですね。この10年で。
今の仕事もここまでやったんだし、気持ちを切り替えて始めたことだから、続けたいって気持ちはあるけど…。やっぱり、お仕事の内容の厳しさと、お給料が見合わないから、厳しい。まあ、転職すると思います。
―恋愛はどう?
んー、またやってくるクリスマスとか、自分の誕生日とか、そういうときに、彼がどうしてくれるかな?っていうの次第ですね(笑)。
なんか別に僕、クリスマスとか誕生日とか、もともとそんな興味ないですけど、なんか…せめて、なんかあるでしょう?って思うんですよ。豪華なプレゼントとか、そんなもんなくていいけど、誕生日をお祝いするような、なにか一言あってもいいんじゃない?とか。
去年のクリスマスには、「次は一緒に居たいな」って自分から言ったんだから、なんか、そういう約束もできない、果たせないとか、そういうのはちょっと、これから一緒に生きて行くんだったら、無理だなって。僕の人生観的には。
―約束をちゃんと果たしてくれるのは、大事だと思う?
思いますね。自分の言ったことぐらい覚えてて…っていう感じかな。
―誰かと一緒に生きていくっていう時に、キミにとって何が大事?
うーん、誠実さ?
―誠実さ。
結局、結婚は今の日本では難しい。出産、子育てっていうことも、ないと思う。そうなると、僕らが法的にも結ばれない状態で、パートナーになって必死に暮らしていくって、相当な決意と覚悟がないと、ダメだと思うんです。ゲイのカップルが簡単に崩れる理由ってのも、たぶんそこにもあると思うんです。だから、軽い気持ちで付き合う人とかもいると思うし、別れる時も軽い気持ちの人もいると思うんです。そうではなくて、そういうこと(結婚、出産、子育てなど)がなかったとしても、誠実に相手と向き合ってあげられる。助けてあげられる。支え合いが出来る。そういう人が良いなって思ってます。
別に、毎日ずっと真面目に生きろとか、ウソも一切つかないとかじゃなくて…、別にいいですよ。時々魔が差して、誰かと浮気したって。だけど、せめてパートナーにはしっかり向き合おうよって、僕は思ってます。
あなたの10年、どうだった?vol.2 - 前編
今回の記事では、「あなたの10年どうだった?」というテーマで、またっきーの個人的な知り合いの方に、過去10年間にあった出来事を振り返ってもらいました。
10年間。数字にすると重みがありますが、瞬く間に過ぎてしまうような年月でもあると思います。これを読んでいるあなたも、様々な出来事を経験し、様々な感情を抱いてきたのではないでしょうか。そういった、ごく個人的な歴史について、一緒に紐解いていきたいというのが、この記事の趣旨です。
お話の内容は、語り手の方から事前に用意してもらったトピックをもとに、可能な限り自由に語ってもらいました。この記事は、何かのテーマに特化した聞き取りではありません。仕事、学業、趣味、恋愛など、大切にしていた物事の移ろいに思いを馳せて、その時々のことを率直に話してもらうように努めました。
なお、お話の内容は、地名や特定の人物が分からないように編集しています。
▼10年前
初めての職場への限界 / 周囲との差 / 夢を諦める
―就職はこの頃?
就職してから、何年か経った頃でしたね。労働時間が長かった、単純に。それが、自分の中でめちゃくちゃ辛くて。結構…、結構やられてましたね。メンタル的にも身体的にも。自分の身体が崩れていくのを感じ始めたかな。
なんというか、仕事が嫌すぎて。ちゃんと出勤をするんですけど、力がだんだん入らなくなってくるとか、正常な思考ができないというか…。休みの日とかも、半日寝て、あとはぼーっとしてるみたいな。気力がない感じですかね。死んでたかな。その名の通り死んで…ゾンビだったな。ははは(笑)。
でも、初めて就いた仕事だし、夢を持って入ったとこだから、やんなきゃみたいな。
―自分のやりたい仕事だったんだ。
うん、夢を持ってやってましたね、本当に。
―どんな夢?
その頃は、フレンチとかイタリアンとかでお仕事してたんですよ、飲食店で。それで、めっちゃ大きい話ですけど、いずれフランスとか行けたらいいなって。そこで、お店を出すのか、修行するなりなんなりして…みたいなのを考えてましたね。
その、勤めたところも、結構有名なところで。だから、意気込んでたんですね、余計。自分のお店を出すために修行してるんだから、これが普通だよな、みたいな。この業界はこんなんだから、拘束時間長いのは当たり前、休みが少ないのも当たり前、みたいな。まあ、限界来てたんですけどね。実際のところ。
―限界?
身体的にもメンタル的にもですね。辞める半年前ぐらいから、毎日気力ない状態。友達と遊びに行っても、なんか寝てるみたいな。僕が運転役なら、みんなが遊んでいるあいだ、もう車の中で寝てるみたいな。で、明日からは普通に仕事みたいな。
―周囲との差というのは、どこで感じたんだろう?
このくらいの頃、周りも就職するか、学生してるかの友達が周りにいるわけだったの。それで、学生の頃から繋がったままのひとから、色々話聞くじゃないですか。「いま何してる」とか、「こういうことやろうとしてる」みたいな。それ聞いた時に…まあ、確かに自分は夢のためにっていう建前で頑張ってるけど、実際のところめちゃくちゃ辛いことしてる。それで進歩してるのかって言われたら、自分にはそう感じられなくて。そういった焦りとか、若さゆえの周りとの比較があったんですよね。 自分は何してるんだろうとか。
―自分は何してるんだろうとか…。
しかもゲイっていう、セクシャリティ的なところも比べてた。なんか、みんなは彼氏彼女ができ始めてて、なかには結婚したいとかっていう話が、始まるじゃないですか。でも、自分はなんか…何もないみたいな。就職して、独り身で、これからどうやって相手見つけて…みたいな。
―夢を諦めるというのは、どういったこと?
あ、仕事のことです。なんかこの状態で、この業界で生きてくのって、実力とかセンスとか求められるし。そのうえ、この労働時間が普通なんだとしたら、自分の時間ないし、みたいな。
―労働時間が長いのが決め手だったんだ。
朝9時に出勤して、夜の2時まで働いて、帰ってまた次の朝が来て…そういう毎日を繰り返してたから、「これが毎日続くんだったら、もう夢なんていいわ!」っていう感じでしたね。
▼9年前
働かないということ / 親友と自分
結局さっきの仕事は辞めて。半年以上…かな、働かずにいたんですよ。同じ学校に通ってた親友と、密に遊びだしたんですよ。時間ができたから。働かずに。
何かあったかって言ったらちょっとあれですけど、働かずに親友と無駄な時間を過ごすみたいな。それこそ、ネカフェでネトゲやって、帰ったら、なんか…寝て。反動ですかね、自由な時間を満喫してたと思う。それでまあ、自然とお金は無くなっていくから、その頃に就職かな?みたいな感じでしたね。気持ちを癒す時間っていうか。
やっぱでも、そのなかでも仕事してないっていう不安感とか、一生懸命やってた職場を辞めて、いま何してんのかな?みたいな気持ちもありましたけどね。
―そういう気持ちって、どんな時に来るのかな?
まあ、ひとりになった時ですね。うん。その寂しさを紛らわすのに…、まあ自分は恋人がいるわけでなく、家族に自分のことをそんなに打ち明けるような人間じゃないんでね。そうなった時に、親友と遊んでる時間が、寂しさを紛らわしてくれた感じかな。
―楽しかった思い出とかある?
なんだろうな…。もうひとり、高校時代から仲良かった友達がいて、その友達のところに無理やり突撃して、クルマで急に海行ったりとか。ああ、これ遊んでたね(笑)。本当に、若さだと思うんですけど、そういうのが楽しかったかな。久しぶりにね。遊べなかった数年間を取り戻すかのように遊んでましたね。
―遊びって大事だよね。
いや、大事ですね。仕事とのバランス大事だなって思います。大人になった今も。
―その考えは今もあるんだね。
うん、そうですね。仕事と私生活の割合って大切だなって思う。夢を諦めたというのも…、職場によっては違ってたかもしれないですよね。もうちょっと、こう、条件が、柔らかい所があれば…。拘束時間がね、もう少し優し目で、休みもちゃんと取れてみたいな感じだったら、よかったのかもしれない。
▼8年前
お酒の世界 / 好きとは何か
働かないとやばいなって思い始めて、まあ探すんですよね。仕事を。それで見つけたのが、結局、飲食業界なんですけど。
まあ、夢を諦めても、食に関する興味を失っていないから、やっぱ働くとしたらそういう道かなと思って。それで見つけたところが。そのお酒の世界だったんだよね。
お酒の世界って言っても、別に接待してとかじゃなくて。高級居酒屋ったらいいんですか?バーもあるし、普通に居酒屋みたいなメニューもやってるけど、めちゃくちゃこだわってて、安くもないみたいな。社長さんとかが来るようなとこだから、料理にもちゃんと力入れてるし。オーナーと店長が妥協しないひとで、めちゃくちゃ厳しかったですね。
―厳しさも感じつつ、ここで働くことにしたんだ。
地元の中心地で働きたいって気持ちがあって。そこにあるからまあ、いいかっていう気持ちもありましたけど。ただ、働く前に、お客として食べに行ったりとかもして、めちゃくちゃこだわっているところを見たんですよ。そのあと、話も聞きに行ったときも、「ここで頑張っていけば、自分のメニューを開発しても良いし、いずれ店長としてやってもらうことも考えてる」っていうのを最初に言われたんです。だから、頑張れば、ここで自分を表現することができるのかなっていう、強い気持ちもありましたね。
―周りの人の反応はどうだった?
あんまり僕、自分のことを話さないんですよね。遊んでた親友とも、「また働き始めたよ」「じゃあ今度食べに行くね」みたいな感じで。まあ、一度辞めてるから、無理せず頑張ってねみたいな感じでした。
―好きとは何かっていうのは?
ああ、それがさっき言った、自分のセクシャリティの問題になってくるんですけど。人を好きになるってなんだろう?みたいな。何が好きなのかわからない。
たぶん今は、全然ないんですけど、この頃は女性、男性、どっちも好きなのかな?みたいな、なんかよくわかんないなっていう時代だった…。好きな人は確かに居るんだけど、この好きってなんなんだろうみたいな。まあ若いと言えば若いかな?(笑)。
いろんな人に聞きまくってましたね。「好きって、どういう気持ち?」みたいな。
―どんな答えが返ってきたの?
やっぱみんな、「これっていうのはない」って言ったんですよね。明確なものはないけど、まあ一緒にいて楽しいとか、気が合うとか、そういうことじゃないの?みたいな。でも、それって自分もそう思うけど、でも…。
なんて言ったらいいんだろう。僕、女性も好きになる…なってたのか分かんないんですけど、肉体関係はないんですよ。そういう行為を、女性とはできないんですよね。だから、それでも好きなの?みたいな。これ好きじゃなくない?みたいなのは悩んでたかな。
―女性に対して、性的な感情が生まれなかった。
全くないです。なんか…むしろ、気持ち悪いって思ってしまうような感じですね。確かに、一緒にいて楽しいし、なんか手つないだりとか、こうキスをするぐらいだったらいけるんだけど、それ以上になると…嫌悪感みたいな。だから無理なんだろうなって。
―この女性といると落ち着いた気分になるなとか、居なくなったら困るなとか、そういう親しい感情を抱くことはあったの?
ありましたね。この頃から、ほぼ時間の大半を一緒に過ごしていた女性がいるんです。それが彼女になって、後々に何年も付き合うことになる方なんですけどね。その人とは、何でも話せるし、一緒にいて楽しいし、全然苦じゃない…ずっと一緒に居たいみたいな気持ちを、その人に抱いていました。
▼7年前
メンタルと彼女 / 居候
僕、調理の専門学校行ってて、彼女とはその時からの仲なんですよ。同級生。それで卒業した後も、絡んでくれる方だったんですけど…、猛アタックされたんですよ。でも僕はやっぱ、恋愛対象ではないからお断りしてたんですよ。まあ、理由は言わずですけど。
でも3、4回ぐらい…諦めずに来てくれてたんですよ。たぶん、僕がお付き合いを断っても、一緒に遊んでたから、まあ変に期待させたっていうのもあると思うんですけど。それだけ来てくれるなら、付き合いましょうということになったんですよね。
そこから彼女っていう立ち位置に変わってくんですけど、そのぐらいの時から、徐々に自分の中に積み重ねてきた、その仕事上の苦労や辛さとか、セクシャリティに対しての悩みとかが、彼女と密になればなるほど、自分を苦しめてってたんですよね。徐々に徐々に。
自分は、女性を好きになるのかもしれないですけど、そういう、まあ、身体の関係で、満足はさせてあげられないし。でも、離れたくはないみたいな。じゃあ、好きってなんなんだろうって。
お付き合いするときに、あっちから言ってくれたんですよ、「もしかして、君は男性のことが好きなの?」って。それで、「そうだよ」って。彼女は「それでも、好きだから付き合って」っていうのが、始まりだったんですよ。
そこまで理解してくれてたから、「君の期待を裏切ることもあるかもしれないけど、それでもいいんだったら…」って、彼女と付き合い始めたんです。だからまあ、自分のことも理解してくれるから話しやすかったし、居て楽だったし。
―男性が好きということを自覚してて、それを彼女に伝えてでも、キミは彼女と付き合いたいと思ったんだ。
やっぱり、何回も来てくれるっていう気持ちに押されたっていうのもあるかもしれないですね。この人とだったら、こんなに自分を諦めずに来てくれて、その…気づいてたわけじゃないですか、僕が男性を好きになることを。そこまで分かって、自分と一緒にいたいという覚悟がある人とだったら、幸せになれるんじゃないかなって。好きっていうのは何なのかという悩んでた自分に、光が見えた感じでした。
―居候というのは、彼女のところに?
そうです。この頃、ちょっとメンタルのバランスを崩してて。さっき、他の人に自分の気持ちは言わないって言ったと思うんですけど、自分の中でめっちゃ溜め込んじゃうんですよ。それで、仕事でも色々あって…、抱えてたものが一気に爆発したんですよね。それで彼女から、「病院行ったら?」って言われて、それから通院するようになって。ああ、なるほどねって。自分の気持ちはこんなにも蝕まれてたんだって思って。
通院が必要な状態なのが分かったのと、なんか仕事をやめたり、働かない期間があったりとかして、自分に自信が全然なかったんですよね。だから、親と顔を合わせるのが嫌で、喋りたくもないなって。それで、彼女のおうちに転がり込んでたわけですね。
なんか一時期は、彼女の家の駐車場で、彼女の車の中で、夜一緒に寝て、朝起きてみたいな暮らしをしていて。そうしたら、彼女の親御さんも結構自由な人で、「そんな車の中で寝てるなら、家で寝ればいいじゃない」みたいな感じで、普通に一日過ごさせてくれたんですよ。お風呂も使っていいし、一緒にご飯食べればみたいな。今考えたらすげえなって思います(笑)。
―すごいね。彼女の家族も受け入れてくれたんだ。
いやあ、めちゃくちゃありがたいですよね。それに尽きますね。彼女と付き合ってると、はっきり言ってないし、事情も深く聞いてこないし、僕がどういう人間なのかも知らないのに、受け入れてくれたっていうことが、すごくありがたかったですね。
この彼女にして、この親御さんもすごい優しい人だなって。めっちゃ感謝してましたね。それに甘えてた部分もありましたけど…。
▼6年前
Wワーク / 同世代
―Wワークとあるけど、お仕事の仕方が変わったのかな?
さっき話した飲み屋さんのところは、依然続けてたんですけど、なにせ飲食業なんで、やっぱお給料自体はそんなによくないんですよ。個人店だったから、深夜時給っていうのも換算されないんですよね。だからお給料自体、すごくフラットで。ボーナスもなければ、福利厚生もないというところで。
それでまあ、これはもうちょっと厳しいだろうということで、もうひとつお仕事を探し始めたんですよね。副業っていうんですか?それで、ネカフェでバイトをするようになりました。早番でバイトして、夜は飲み屋さんの方をやるみたいな感じですね。
―この頃、体調は大丈夫だったの?
一応、精神的には徐々に回復しつつあったし、そんなには苦しくはなかったですね。病院に通いつつ、掛け持ちで仕事して…、相当身体をいじめてましたね(笑)。
―飲食以外の仕事は初めて?
そうですね。実際、ネカフェのバイトも3、4年か続けていくんですけど…、まあ嫌な面もあったけど、楽しかったかな?飲食とはまた違うサービス業だし、職場の人との関わりも楽しかった。自分のなかでは、新しい感じだったんですよね。
たまたま同じ時期に、ネカフェで同世代の同僚が3人出来るんです。ダブルワークで俳優を目指してるひと、バンドマン、もうひとりは学生。それでまた、自分を比較し始めちゃうんですよね。「その人たちめっちゃ輝いてる!」みたいな。僕、あんまり同僚っていうのがいなかったんですよ。最初の職場もそうだし、飲み屋さんも歳が近いっていう職場の人が少なかったので、その時のネカフェが初めてで。
―同世代と比較すること、今回は重荷にならなかった?
重荷まではいかなかったけど、やっぱみんな、行動力すごいなーって、ぼやっとした思いはありましたね。自分はもっと、何かできるのかな?みたいなのも。
▼5年前
人生の迷子(昔から)/ 一度目の彼女との別れ
彼女と何年か付き合って、この頃も好きでは居たんですよ。彼女への気持ちは変わらなかったんですけど、やっぱり自分は男性が好きっていうのは、もう依然ずっとあって。街中で可愛い男の子がいたら、その子を見ちゃったり…。「この気持ちを抱えたまま、彼女と一緒にいるのって、どうなんだろう?」っていうのが、強くなり始めたんですよね。
昔から人生の迷子っていうのは、自分で(男性が好きということを)自覚し始めたのが学生の頃だったんで、その頃から周りのノンケの子たちと比較しちゃったりとか。やっぱり、周りの結婚、出産っていうのを聞き始めて、これでいいのかな…みたいな。それと、彼女への申し訳なさがあって。
僕、ずっと悩んでるんですね。ずっと悩んで、ずっと比較して。
―ずっと悩んで、ずっと比較して。
それが僕の人生なんですよね(笑)。
あるとき、彼女に話を持ちかけたんですよ。まあなんでかって言ったら、僕が浮気したからなんですけど…。浮気したってのも、付き合ったりとかではなくて、会いに行って…なんやかんやみたいな。
―会いに行ったのは、男性?
そう。彼女とめちゃくちゃに喧嘩した日に、会いに行きました。
―他の人とそういう…浮気をして、その時、自分の気持ちとしてはどう思ってたの?
やっぱり、男の人が好きなんだなって強く認識したから、このままじゃダメだって思いましたね。彼女も幸せになれないし、自分も幸せになれない。ってめちゃくちゃ思いましたね。だってもう、すでに泣かせてるわけだし、これはダメだろう。彼女との、この関係は良くないなと思いましたね。
その、彼女と身体の関係を持てないのがツラいんですよね。彼女はいいよと言うんだけど、求められることもしょっちゅうあって。でも、身体に触れるのイヤだから…彼女のことは、めちゃくちゃ泣きながら触ってました。暗いなか、バレないように。自分も満たされないし、彼女も満たされなくて…。
それで、彼女と話す機会をつくって、色々あったけど、お互いのためを思うなら、綺麗事じゃなくて…別れようみたいな。もっといい人いるよって。
でも、「別れたくない」って、彼女が言ってくれたんです。
なので、「じゃあ連絡を一切取らず、しばらく時間を置いて、またここで会おう。そのときは…、ヨリを戻す、戻さないは別として、また気持ちをお互いに整理してから会おう」みたいな感じで。そうして、彼女と別れました。
自分も、出来ることなら別れたくなかったっていう気持ちはあるけど、半分は別れたかったのかもしれないですね。この苦しい気持ちから解放されたいとか…あったと思う。けれど、やっぱり気持ちが変わらなくて、そして、彼女も気持ちが変わらないんだったら、やっぱりそれは一緒にいてもいいんじゃないかなって、そんなふうに思ってました。
(後編へ続く)